バスジャックって何?

中学生の少年がバスを乗っ取るという犯罪が発生しました。家庭環境の問題なのかはたまた社会が悪いのか、例によってメディアではその真犯人探しが「楽しく」報道されています。いつも思うのですが、悪いのはその乗っ取り犯。そして、未成年者である以上、教育上の責任はその保護者です。学校に問題があったとか、友人関係での悩みがどうのこうのとかは二次的要因でしかないのに、メディアでは、なんとかこの犯人の先生なり級友なりを悪者にしないと気がすまない様子です。

まあ、その辺の悪者探しゲームはメディアにお任せしておくこととして、本日気になっている話は全く他のことです。報道では「バスジャック」と表現しておりますが、この「バスジャック」という表現は一体何なのか?「ハイジャック」という表現が我が国のメディアで使われ始めたのはいつなのか記憶にありませんが、ハイジャックとは、米国の西部開拓史時代から使われている表現です。これは駅馬車強盗の意味でした。つまり"high-jack"ではなく"hi-jack"なのです。俗説ですが、駅馬車強盗がその御者に対し、「あんちゃん、馬車を置いてどこかへ行っちまいな」と声をかけるのに、"Hi, Jack! Leave your coach!"と呼びかけたのが語源ではなかろうかと言われております。即ち、バスが乗っ取られた場合は「バスがハイジャックされた」のであります。これに類する表現にシージャックや電波ジャックなどを耳にすることも多々あります。

実は、以前よりメディアの方には「投稿」という形で何度かそれを問うたことがあるのですが、一切のお応えをいただいたことがありません。天下のNHKですら堂々と「バスジャック」という表現をしております。十年ほど前、インターネット草創期の「言語学サイト」、即ち本当に学問を理解していた仲間の掲示板でこの辺を論じたところ、ほぼ満場一致で私の意見にご賛同をいただきました。ただ、外来語はえてしてその真意を曲げられ、一般用法として定着してしまえば、それが正しい意味になってしまっていますので、仕方の無いことであるのかもしれません。例としては「背広」「ナイター」「ゲッツー」更には「ホームページ」などの和製語や意味の取り違えが今や我が国においては市民権を得ておりますので、この「バスジャック」という表現もそのひとつなのでしょう。

メディアに投稿しても一切相手にされなかったとしてもこれは仕方の無いこと。当然、彼等は自らの非を認めることはせず、何も無かったことにするか無視するというのがその対応として至極当然でしょう。昨日のブラウン管には、NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日テレビ東京全てに「バスジャック」という表記が映されていました。今朝ほど、埼玉ローカルのFM局Nack5のニュースでは「バス乗っ取り」と表現していたので、常々自負していた埼玉の民度の高さをごくわずかですが確認できたのが「今日の小さな幸せ」と思えて片頬笑いを浮かべております。