帰国子女タレント

三十数年前、外貨所持がやっと自由化されたばかりの頃に官費留学生として米国に一年間派遣された時は村の誇り、母校の誉れといった立場にありました。年間の海外渡航者が数千万人という今日では「だから何?」で片付けられてしまう話です。年末年始や夏休みを海外で過ごすのはさしたるステータスではなく、また、仕事の都合上での海外生活者は珍しいことではありません。

そんな中ですので、当然、留学(文部科学省の定義ではなく、一般的な表現での留学)経験者は星の数。ましてや箔付けのために留学する者が増加の一途を辿ったのは昭和の終わりから平成一桁時代でありましょう。その結果、バイリンガルやら帰国子女やらという不気味な言葉が使われ、たかが数週間或いは数ヶ月、日常生活は日本語でできる環境で過ごした者がその対象としてもてはやされました。

「行かないよりは行ったほうが良い」というのは私の持論ですが、あくまでもその結果が大事でしょう。つまりは、今まで百点満点の20点だった者が25点になっていればそれはそれで「成長」として認めようではないかと、あくまでも寛容に考えてみてはおります。しかし、いわゆるタレントと称する人々は如何なものか?・・・と気になります。

少なくともニューヨークをNYと呼ぶうちはまだしもロス・アンゼルスを「ロス」などと言っている連中は言語道断。せめて「ロサンゼルス」くらいに留めてくれ・・・と思ってしまいます。と、これはあくまでも一例ですが、要するに、タレントさんが何かを言うとその波及効果は大きいので、願わくは正しい海外経験者のみが海外について語っていただかないと、私たち愚民は「そういうものか」と思ってしまう怖さを危惧しているのが今の私です。