入学式の主役

ここ数日、街を歩けばあちこちで入学式が行なわれています。「ランドセルが歩いている」ような子供達がおめかしをして母親に手を引かれつつ歩いている姿や初めて着た詰襟を窮屈そうにしている中学生、高校生の男の子、そして、昨今の流行では不気味なくらいに短いスカートを見慣れているせいか、かえって「長いなぁ・・・」と思えてしまう制服に身を包んだ女学生達、皆新しい学校への期待と不安に包まれた姿です。

どこの学校でも正門前にある入学式の看板の前で皆さん記念撮影をしておられます。小学校の前で行なわれているのはまだ微笑ましいところですが、それにしてもお母さん達の美しさには驚かされます。一見おとなしそうでいて実は妙に派手なお召し物で、美容院でしっかりと髪型を整え、何時間かけたのかたっぷりとお化粧をしておられます。最近では子供の入学式の為にお母さんのみならずお父さんも休暇を取る方が多いと見え、こちらはごく普通のスーツに身を包んでカメラマンに徹しておられる様子です。

そして、中学校の前でも同じ光景を見かけます。しかしまぁ・・・無味乾燥な言い方をすれば、どんな子供でも学齢に達すれば小学校、中学校に入学するに決まっているのになにやら人生の一大事として取り扱われているようで、笑いをこらえるのに精一杯で通り過ぎましたが・・・かく言う我が娘も今年は中学一年生。入学式の朝は9時半に学校に来るようにといわれているのに8時前には既に慣れない制服を身にまとい、出撃体制が出来上がっておりました。私と結婚したような変わり者の妻はジャージにノーメイクで洗濯機を回している中でのことでした。まあ、その姿が入学式の時間にはそれなりに化けて会場に臨むわけでしょうが、この程度でいてくれて本当にありがとうと思えてなりません。

それにつけてもこのお母さん達、どうしてこうも子供の入学式に力を入れられるのか、疑問に感じるところです。結局、他に楽しみも無く、大事なお子様の生涯最大のイベントととらえておられるからでしょうが、前述の通り、学齢に達すれば自動的に発生する義務教育の入学式というものにどれほどの意味があるのか、そしてそれをここまで祝っていて、何か他のものに目を向けるのを避けている材料にしているのではないかと思うとやりきれません。結局その子供達はやがてケータイを買ってくれとせがみ、小遣いを上げろと叫び、喧嘩をし、恋愛をし、オトナになっていくのも至極当然で、個々の人格は親の意思で縛るものではなく、ましてや親の所有物では無いことにいつまでも気がつかない、或いは気がつこうとしないこの親達の行為が世の中を悪くしているのです。