自らの名を名乗れない子供達

地域の柔道連盟役員をしているので年に6回、昇級審査会の御手伝いをします。それぞれ受審する級により異なりますが、私達の仕事は受審者を組分けし、数試合を行なわせ、その結果を柔道手帳に記入し、勝点数とその他の要素により昇級を認めるという流れです。柔連の役員は皆ボランティアですが、それなりに「先生」と呼ばれる立場にあります。審査会当日は組み合わせを作る、審判員をする、講習をする、記帳をするなどに役割分担をしますが、先日、その記帳を担当し、最近の子供達が「一体どういう教育を受けているのか?」という疑問に直面しました。

試合結果の記帳は記録紙にあるものを個々人の持つ柔道手帳に転記し役員印を捺印することです。受審者は審査試合の終了後、その受付に並び、「○級○組のだれそれです」と名乗り、手帳を提出し役員に記帳してもらうという流れです。言わば当り前のことですが、まず、この名乗ることができない子供がほとんどという恐ろしい時代になりました。

子供といっても審査を受けるには中学生以上で無くてはならず、高校生以上も多々いるわけで、ある程度分別があるだろうと思われますが、半数以上の受審者は列に並び黙って手帳を出します。こちらはその受審者が誰であるか、何組で何級を受審したかなど知っているわけはありません。しかも彼等は審査を受けに来た者であり、こちらは「先生」であります。黙って手帳をだすので、「何組の誰だ?」と問うと、蚊の鳴くような声で「○組・・」などと言います。名前を名乗りません。そして、試合の記録紙が目の前にあるのを見ると自分のところを指差すなどしたりする者もいます。
毎回100名以上の受審者がいますが、「○級、○組、だれそれです」と、「です」までつけて言え、更に記帳、捺印が終った際に「ありがとうございました」と言える者は社会人レベルを除くとひとりかふたり。何度も聞き返さざるを得ない者が10名以上います。

これは学校教育ではなく家庭教育に問題がありそうです。朝起きたら「おはようございます」、出かけるときは「行って参ります」、食事の前は「いただきます」等々、しっかりと発声している家庭が少なくなっているそうです。前述のように自分の名前すら名乗れず、こもったようにぼそぼそと喋る子供が増えるというのは、平常時の挨拶を励行していないところに起因しているでしょう。我が家の子供達には朝の「おはようございます」の声が小さいと何度でもこちらから大きな声で「おはようございます」と言うようにしておりますが、これは現代ではアナクロなんでしょうか?