勝っても負けても後味が悪い

この記事を書いているのは06年3月21日午前中です。ワールドベースボールクラシックとかいう野球の世界大会の決勝が本日行なわれるそうで、日本代表チームがキューバと闘うとのことです。大会システムの不思議から決勝に勝ち上がり、世界一になるか、準優勝をするかと、一部のメディアや野球好きな方々がやきもきしている頃であろうと思われます。

ここで私が「大会システムの不思議」と表現したのは、良く良く考えると、予選リーグやら何やらで、ここまで日本チームは4勝3敗、そして、準決勝で負けた大韓民国チームは6勝1敗です。リーグ戦形式ならどちらが上位にいるか一目瞭然です。仮に今回、ここでキューバを破って優勝したとして、5勝3敗となりますが、それでも何か優勝チームの勝率とは思えません。激戦の末ぎりぎりで勝利を手にするというイメージは我が国の国民が好きなパターンでしょうが、今回は、決してそのような美しいものではなく、単に棚からぼた餅以外の何ものでもないかと思うと、素直に喜んではいけないのではないかと考えてしまいます。

システムの不思議はまだ小さい部分でありまして、むしろスポーツマン精神に則っての考え方で言えば、今回、米国にせよ我が国にせよ、ベストメンバーで臨んでいるとは到底言えないというところが不満に感じます。これがサッカーのワールドカップであれば世界のトップレベルからは程遠い日本代表は本当のベストメンバーで臨み、全力を出し切って闘い、敗れて帰ってきているのが現状ですが、仮に相手国が一軍半レベルの選手を出してきていたら敗戦は屈辱を増幅させますし、勝っても本当に勝ったような気がしない達成感の無さを味わうことでしょう。

本来のスポーツマンシップが理解できず、こういうイベントを単なるお祭りとしてしか考えられない世間一般の人々や最近増えている「理解せずに喋る評論家」は、単に勝てば官軍のような発想で物を語りますが、やはりスポーツはお互いに最高の状態で闘い、勝敗が決した時点でラグビーでいうところの「ノーサイド」のような爽やかさがあってほしいものです。結局、日本代表と称する野球チームに加わらなかった一部の一流と言われる選手やそれを許す野球界のトップの人達は他国のチームを馬鹿にしていたに過ぎず、今回のワールドベースボールクラシックとやらはただのお祭りであったこと、そして、日本のみならず野球発祥の地である米国すらが同様であったことが明らかです。種目は違いますが、過去の競技者であり、現在指導者且つ行政下の団体役員をしている私にはスポーツそのものに対する冒涜にしか見えません。