抜群の合格者数

我が家の子供達は小学校6年生と中学校1年生、どこで調べるのかあちこちの進学塾からのご案内が毎日のように届きます。PTAの役員をやっている妻の話によると、お母さん達の話題も私立中学の受験やら高校進学の状況やらにおけるものが多く、どこそこの塾が良いとか悪いとか、よくもまあそこまで盛り上がれるものだとのことです。

結論から述べてしまえば、どこの塾に行ったからという要因より、個々の子供の資質のほうが大きい要因であるはずですということで、塾ができることはごく僅かな部分でしか無いはずなのに、世の中の親御さん達はそれが義務であるかと思い込んで子供を塾に通わせております。更に、最近の行政は民間委譲がお好きですので、本来学校で行なわれるべき教育というものを塾に委ねつつあるようです。それは、はっきり言えば教育行政の手抜きでありましょう。本来プロであるべき教育行政に携わる人が場合によっては教育学を学んだわけでもない人の意見に簡単に左右されるのですから恐ろしい話です。

進学塾のチラシや案内冊子を見ると、「○○高校に○○名合格」と大きく書かれております。そして、世間の親御さん達はその数値を見て、「この塾に入れると○○高校に合格するんじゃないかしら」などと考えてしまうようです。子供可愛さのあまり、単なる広告宣伝のための文言であることに気がつかないようですね。小学生でもわかりそうなことで、合格者の数字というのは確かにひとつの目安なのでしょうが、その分母は?という疑問は持たないようです。

生徒数49名の塾でひとつの高校に50名の合格者を出すことは不可能ですが、生徒数が500名いればその上位一割の生徒が合格すれば50名に達するわけです。実は、以前、大手の塾の講師をやっていたことがある私は、その教室の責任者に「出来ない子は見捨てても良いですから」とはっきりと指示されたことが気に入らないが為その職を辞したという経験者です。学習塾というのはあくまでも企業です。当然、利潤追求が必要となります。つまりは、もともと資質の高い生徒を集めることと、出来の悪い生徒を少しでも良くすることによりその価値を高めようとしているはずです。そして、それは営利団体として当然の行為であります。そこに気がつかず、学校の先生はあてにならないから塾に頼るという愚行が教育行政の荒廃への螺旋構造を作っていることにそろそろ気がつくべき時ではないでしょうか。我が家の子供達はどの学習塾にも通っておりません。