烏合の合唱団

年末になるとあちこちでベートーベンの交響曲第九番が演奏されます。これは日本だけの風物詩でありましたが、最近では逆輸入ならぬ逆輸出で、欧米でも「年末に第九を」といったイベントが増えてきているとか。

そもそも、季節の風物詩などというものはどこの世界でもなんとなく始まるもので、また、その起源がどうあれ、定着すれば当然の慣習となるものです。ちなみに、日本で年末に第九が演奏されるようになったのは第二次世界大戦後、楽員が多く参加でき且つ客入りが良いので、言わば餅代を捻出しやすい演目として定例化されていったという説が強いようです。もっとも、それに先駆け、この第九を第二次大戦前に指導したドイツの指揮者がドイツでは大晦日に第九を演奏するのが恒例であると発言したという説もあります。つまりは、その由来など誰も知らないままに現在に至る・・・というのが実状でしょう。

年末になると音楽関係者の中でも「にわか第九」などという表現があるようで、日本中どこへ行ってもそれなりの合唱団が形成されております。その多くは専門的な音楽教育を受けた人たちではなく、「ちょっとやってみようかな?」の延長線上にいる人で、「何度目ですか?」なんぞという会話が交わされていることが多いと思われます。私もそのひとりで、いくつかの合唱団に参加したことがありますが、初めて行ったところでは、生来のひねくれモノですので、「他所で一回だけ」と答えてみることにしております。なぜならば、どの合唱団にも素人の指導マニアが存在していて、利いた風な口を叩くのを陰で楽しめるからです。その手の人々の優越感を最高潮に持っていっておけば合唱団のクォリティも多少は高くなるだろうという・・・なんと崇高なムードメーカーなんだろうと自画自賛をしております。

それにしても、過去、いくつかの素人第九合唱団に参加してきましたが、どこへ行っても古参のメンバーがいくつかの派閥をつくり、不必要ないがみ合いが水面下で行なわれていることか・・・結局、何度か歌うとあたかも自分がプロにでもなったような気分で勝手なセオリーを作ってしまい、その型にはまらないものを除外してしまうからそういうことになるのでは無いか・・・少なくとも100人くらいの人間が集まっての合唱なんですし、あくまでも個性ではなく集団の美しさを求めているのですから・・・音楽は「楽」という漢字を使っていることを忘れずに、皆で楽しめるようにしたら良いのに・・・と思う私はやはり群れに入れない一匹狼の性格のようです。