有名スポーツ選手悲喜こもごも

昨年のアテネ五輪において、男子柔道60kg以下級で野村忠宏選手は3大会連続金メダルという快挙を成し遂げました。今日野村選手は柔道関係者ならずとも国内での知名度の高いスポーツ選手であろうと考えられますが、その野村選手が時々フィルターをかけて発言する9年前の物語にスポットライトをあててみたいと思います。

アトランタ五輪は1996年に開催されました。遡ること4年、バルセロナ五輪の女子柔道48kg以下級の銀メダリストである田村(当時)亮子選手はそれ以前から日本国内での知名度も絶大でありましたが、野村選手は全くの無名選手。ましてや、60kg以下級ということは、外見的にもごく普通の男性のサイズであり、むしろ多くのスポーツ選手の中にあっては小柄な方でして、関係者でなければトレーナーかマネージャーではないかと考えてしまうかも知れません。

アトランタの空港に日本柔道チームが到着した際、先乗りの報道陣が一斉に田村亮子めがけて突き進み、あれやこれやとインタビューをいたします。そのとき、近くにいた青年を「スタッフは邪魔だ。どけ!」と言って突き飛ばした記者がいたそうです。その青年が野村であることは皆様のご想像通り。彼は大会において見事金メダルを獲得しました。テレビでは報道されなかったようですが、その後のインタビュー時、ある記者が野村選手に質問を投げかけたところ、野村選手は「お前にだけは答えない」と言ったとか言わなかったとか・・・ちなみにその大会で銀メダルであった田村亮子の扱い記事は金メダルの野村より格段に多いものでした。それから2000年のシドニー、そして2004年のアテネと、田村(谷)も野村もそれぞれ最軽量のクラスでの金メダルという日本が世界に誇れる結果を残しておりますが、同日の試合であるが故、中継で見ていても、田村の試合直後のインタビューの最中に野村の試合が行なわれてしまい、野村の決勝戦はVTRで流されたこともありました。

それにしても、どうしてこうメディアというものは勝手にヒーロー(ヒロイン)を作り上げ、他のものに目を向けられないのか・・・そして、視聴者というものはどうしてこうそのときだけ盛り上がって後は忘れてしまうのか・・・アトランタ五輪で日本は全種目で3つの金メダルしか取っていませんが、その3人(うち1人が野村)全員の名前が言える人はどのくらいいるんでしょうか。そんな、いわゆる「国民の皆さん」に勝利者インタビューで感謝することなんかないぞ!と選手の皆さんには声を大にして言いたいところです。全ての選手の「勝因」の大半は自分の力なんですから。